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2024年度 JNSA表彰のご報告
2024年度
2024年12月24日
特定非営利活動法人 日本ネットワークセキュリティ協会
JNSAでは、情報セキュリティ向上のための活動を積極的に行い広く社会に貢献した、あるいはJNSAの知名度向上や活動の活性化等に寄与した個人、団体、JNSAワーキンググループ を対象に「JNSA賞」と称する表彰を贈る制度を、2006年度に発足いたしました。
この賞は、情報セキュリティの向上に寄与された方々を広く紹介し、その活動を称え、更に積極的な活動をしていただけるよう、設置したものです。この賞が、広く社会に情報セキュリティが根付く発端となり、より良い社会を実現できる一助になればと考えています。
受賞者決定まで
2024年9月に、過去にJNSAの知名度向上、活動の活性化、また広く社会の情報セキュリティの向上に貢献した個人、団体、JNSAワーキンググループの推薦(自薦、他薦は問わず)を募集しました。最終選考会を2023年12月に開催し、受賞者を決定しました。
「JNSA学生賞」には、「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)Basic SecCap カリキュラム」enPiT-Securityからの推薦に加え、「独立行政法人国立高等専門学校サイバーセキュリティ人材育成事業」(K-SEC)からも推薦を受けて表彰いたします。
※JNSA学生賞については、それぞれの推薦母体にて選考が行われております。
2024年度 受賞者
ワーキンググループ(WG)の部(3件)
◇情報セキュリティにおいて革新的でありかつ普遍的なアプローチを続けている
・調査研究部会 組織で働く人間が引き起こす不正・事故対応ワーキンググループ
(リーダー:セコム株式会社 甘利 康文氏)
2016年から9年間にわたり、25の組織にインタビューを行い、記事を公開してきた。
なかでも「特別編」として、大学や中央省庁などへ11のインタビューを実施している。特に、防災科学技術研究所、公安調査庁、財務省、東京消防庁などのES向上の施策インタビューは、記事を読む側はもちろんのこと、インタビューを受けた団体にとっても貴重な機会であることがわかる。自身の施策をインタビューを通じてふりかえることになり、各組織に根付いている価値観をより価値あるものとして認識することにつながっている様子がわかる。
ES向上の施策に対し、内部不正防止やセキュリティの観点での考察を加えた記事は、他に類を見ない当ワーキンググループならではの取り組みであり、「人」の本質に迫った具体的な対策、組織内の誰もが喜ぶ対策など、情報セキュリティにおいて革新的でありかつ普遍的なアプローチと考えられる。このワーキンググループの取り組みは情報セキュリティの新しい視点として、成果と共にその活動が評価され、さらなる今後の継続を期待したい。
インタビュー連載「日本の人事と内部不正」>>
◇サイバー攻撃による損害額の実態を公表し、セキュリティ対策の必要性を社会に認知させることに貢献
調査研究部会 インシデント被害調査ワーキンググループ
(リーダー:あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 神山 太朗氏)
(サブリーダー:キヤノンITソリューションズ株式会社 西浦 真一氏)
サイバーインシデント被害を公表している法人組織を中心に国内の企業法人を対象に広くアンケート調査を実施した。その集計分析結果を「サイバー攻撃被害組織アンケート調査(速報版)」、「インシデント損害額調査レポート第2版」、「サイバー攻撃を受けるとお金がかかる〜インシデント損害額調査レポートから考えるサイバー攻撃の被害額〜」として公開している。
本成果物は、サイバーインシデント被害を受けた企業の実際の被害額として集計され、多くのメディアに取り上げられた。実情がつかみづらいサイバーインシデント被害についての実態を数値として示した成果は大きく、また社会的な反響も大きい。
当ワーキンググループの活動は、サイバーセキュリティ対策の必要性を社会に認知させることに大きく貢献しており、高い社会的評価を得たことから今回の表彰となった。
本アンケート調査は継続的に実施しており、今後の調査結果についても公開が待たれる。
インシデント被害調査WG成果物>>
◇ISO/TC154に関する活動と国際規格ISO14533シリーズの標準化を主導し、国際的な互換性の確保に貢献
標準化部会 電子署名ワーキンググループ 標準原案作成タスクフォース(TF)
(リーダー:三菱電機株式会社 宮崎 一哉氏、TFリーダー:セコム株式会社 佐藤 雅史氏)
電子署名ワーキンググループ/標準原案作成タスクフォースは、2019年に一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)がISO/TC154の国内審議団体としての任務を停止することを受けて活動を引き継いだ。
日本国内のISO/TC154に関する活動を停止することなく現在まで継続させ、日本のISO/TC154に対するプレゼンスを維持することに貢献してきた。
また、TC 154ワーキンググループ6(WG6:Trusted eCommunications)において、信頼性の高い電子取引と商取引を支援するための国際規格であるISO 14533シリーズの標準化について主導的役割を担った。
2024年は、2022年に改訂を行ったISO 14533シリーズの日本向けローカライズ作業(JIS化作業)を主導している。ISO 14533シリーズ及びJIS X 14533シリーズは、デジタル署名の長期的な検証を可能にするための規格であり、政府の電子文書や公的記録の長期保存、電子契約の信頼性確保、医療データの保存などにおいて重要な役割を果たしている長期署名プロファイルを定義している。
デジタル社会における信頼性とセキュリティを支える基盤を整備し、標準化による国際的な互換性の確保や、グローバルなデータ流通の信頼性向上にも寄与する活動を高く評価した。
特別賞
◇サイバー社会の新たな活動として期待される「サイバー記者ゼミ」を開催
・JNPC×JNSAサイバー記者ゼミ・アドバイザリーボード
JNPC×JNSAサイバー記者ゼミ・アドバイザリーボードは、日本記者クラブに所属する朝日新聞社、日本放送協会、共同通信社、日本経済新聞社の有志と、JNSA有志のグループで構成されている。
サイバーセキュリティをテーマにした記者向けの通称「サイバー記者ゼミ」を企画しており、今年度は2回開催した。
このサイバー記者ゼミは、サイバーセキュリティを専門とする記者、これからサイバーセキュリティ関連の取材をする可能性のある記者など初心者から専門知識ある記者まで幅広い記者を対象に、サイバーセキュリティ分野に関心を持ってもらうことを目的として企画している。
サイバーセキュリティに関連するニュースに機敏に反応する知識と切っ掛けの場であり、JNSA会員企業及びその関係先の専門家とのコンタクトポイントを構築する場となることで、専門性ある話題について、正確で確かな情報が世に送り出されることが期待される。
今後のサイバーセキュリティ施策の向上に貢献するサイバー社会の新たな活動として期待と感謝を表したく、特別賞を贈呈させていただくこととなった。
個人賞
◇複雑で理解が難しいデジタル署名検証に携わる者にとってのガイドライン作成を主導してきた
・政本 廣志氏(株式会社サイバー創研)
2018年度より現在に至るまでJNSA電子署名ワーキンググループ/署名検証タスクフォースのリーダーとして活動している。
署名検証タスクフォースでは、2021年度に「デジタル署名検証ガイドライン」を公開し、2023年度に「デジタル署名検証ガイドライン(改定版)」を公開した。また同ガイドラインの理解を深めるための解説書として「トラストのためのデジタル署名検証解説」を公開するとともに、「2024年度JNSA活動報告会」などの場を利用し、広報活動を行っている。
同ガイドラインは、複雑で理解が難しいデジタル署名の検証処理を実装する者や調達する者にとって、その活動を助ける唯一といえるドキュメントとなっており極めて有用である。このドキュメントが広く関係者に利用されることが、デジタル署名に関する活動や活性化、JNSAの知名度向上に対して大きな貢献となり、長期に渡って活動を主導してきたことを評価したい。
デジタル署名の検証に関わる標準化に向けての今後の活動の継続を期待したい。
電子署名ワーキンググループの成果物
JNSA学生賞(3件)
・岡山大学 4年 兼松 智也氏
2023年度にenPiT-Security「BasicSecCap」においてBasic SecCap 10を優秀な成績で修了し、2024年度も継続的にセキュリティについて学んでいる。
マルウェアの静的解析に取り組み、マルウェア解析コンテストであるMWS Cupに2023年と2024年に2年連続で出場している。また、2024年の情報危機管理コンテストにも出場している。
enPiT-Securityの座学や演習で学んだことを活かして、コンテストに挑戦しており、これまでの活動評価はもちろんのこと今後の成長や活躍が期待できる。
・東京電機大学 3年 赤塚 暉洋氏
enPiT-Security「BasicSecCap」において2つのPBL演習科目と3つの先進PBLおよび大学院インターンシップ科目を履修し、今年度でBasicSecCap10を取得する。すでに3つの演習科目で単位を修得した。演習では、議論のまとめ役やグループ全体に話しかけを行っている。分からないことは調べたり質問したりするなど積極的に演習に参加した。さらに暗号やブロックチェーン等について授業で熱心に学ぼうとする姿勢がみられ、演習にも真摯に取り組んでおりレポートも優れていた。
セキュリティの研究をするために東京電機大学に入学し授業や演習にまい進しており、学業に対する姿勢、グループワークでの協調性、積極的な姿勢は他の学生の励みとなるものであり、さらなる活躍が期待される。
・鶴岡工業高等専門学校 創造工学科情報コース 5年 今井 瑞祥氏
サイバーセキュリティ分野において卓越した能力と強い社会貢献意識を示している。
「第2回フィッシングサイト撲滅チャレンジカップ」で個人ポイント部門1位を獲得し、山形県警察と協力して団体入賞(46団体中5位)に貢献した。さらに、地元高校のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の生徒に対してゲーム(Malware Containment)を活用したサイバーセキュリティの啓発活動と指導を行っており、サイバーセキュリティに関する知識を活かした社会への貢献活動を評価した。