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会長ごあいさつ

会長 江ア 浩
(東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
JNSA会長 江ア 浩
会長/江ア 浩

デジタル化とネットワーク化の遺伝子が形成するコンピュータネットワークはその活動展開領域を確実にかつ急激に拡大しつつあります。グローバルなコンピュータネットワークであるインターネットは、従来のコンピュータばかりではなく、地球上のすべての電子デジタルデバイスを国境を越えて接続し、すべてのデジタルデバイス間での自由なデータ交換を可能にするような進化を遂げました。すなわち、これまでインターネットに接続されることは想定することがなかったデバイス(Things)がインターネットに接続されることを前提にしたサイバーセキュリティーを我々は実現しなければならなくなったのです。さらに、メタバースやWeb3に象徴されるように、仮想的なデジタル空間がインターネット上に構築され、新しい社会・産業空間を創造しつつあり、我々が責任を持たなければならない領域の多様性も急拡大しています。

一方、インターネットが社会・産業の重要基盤であることを政府が認識するようになり、各国政府は、サイバーセキュリティーを重要施策として認識するようになり、軍事的にも新しい活動領域とされました。その結果、サイバーセキュリティーは、経済安全保障と国家安全保障にとって戦略的な重要領域と認識されるようになりました。グローバルなコンピュータネットワークであるインターネットへの国の関与の拡大です。

このような中、我が国は、世界に、DFFT(Data Free Flow Trust)という、自由なデジタルデータの流通を安心して実現するグローバルインフラの実現を世界に提案し、ほぼすべての主要国が賛同しています。DFFTの実現、すなわち健全な今後のデジタル前提の社会にとって、サイバーセキュリティー技術の継続的研究開発とその普及が前提条件であることは明らかなことです。さらに、サイバーセキュリティーは、国が提供してくれるものではなく、自助を第1、共助を第2、そして公助が第3とならなければ健全なサイバーセキュリティーの実現とはなりません。すなわち、バランスのとれた 産官学での、マルチステークホルダによる対等な連携協調が実現されなければなりません。

JNSAは、デジタル社会の実現を国家戦略としたe-Japan構想が提示された頃に創設されました。当時は、まだ、サイバーセキュリティーの重要性は広くは認識されていない状況であり、まさに21世紀の社会・産業インフラの実現に必要な最重要領域の育成に資する組織の創成だったと考えることができます。JNSAには、産官学から多様な組織がご参画いただき、お互いに敬意をもった誠実で対等な議論が行われ、共助の実現に資する活動が展開され、公助に深く関係する国への適切・有効な提言も行ってきました。コンピュータネットワークが提供するサービス領域や関係組織は、ますます拡大しつつ、さらに複雑化・多様化しており、JNSAが連携すべき組織はさらに拡大することになるでしょうし、拡大しなければ、社会への責任を果たすことができなくなってしまうのではないでしょうか。

JNSAの参加組織の皆様におかれましては、これまで以上に皆様の力を持ち寄りいただき、また新しい仲間をお誘いいただき、力を合わせて共によりよいデジタル情報環境を作りあげ、それを次世代に引き継ごうではありませんか。 皆様のますますのご参画とご貢献をお願い申し上げます。

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授 江ア 浩