インタビュー連載「日本の人事と内部不正」<第10回>

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EDGE株式会社

【EDGE株式会社の概要】
■設立:2017年4月3日    ■所在地:東京都千代田区    ■従業員数:12名
■資本金:1,000万円
■事業内容:目的特化型社内SNSサービスの開発、提供、運用、コンサルティング

はじめに

EDGE、それは「面と面が交わるところ」。
 今回取材した会社は、そんな面と面が交わるように、人と人が交わるコミュニケーションツールとして社内SNSサービスを提供しているEDGE株式会社である。
 同社は、ITが中心となる社会の中でも、「人」のコミュニケーションに焦点を絞り、働く喜びや満足度を内側から向上させ、「人は、もっと輝ける」を理念に、そのような社会作りに貢献したいという熱い想いを持ったメンバーの集まりである。
 このメンバーを率いる佐原社長は、自分自身が仕事・人生を楽しみながら、メンバー全員の「内側からのやる気・満足度」をぐいぐいと引っ張り、結果として多くのお客様にも笑顔を届けている。
 メンバー全員が自律し、自らの想いで活動し、従業員満足度(Employee Satisfaction、以下「ES」という)のスコアが70という脅威の結果を生み出しているこの会社、一体どのような施策が行われているのか、以下に紹介する。

左から、取材にご協力いただいた佐原社長、プロジェクトリーダーの阿部氏
(左から、取材にご協力いただいた佐原社長、プロジェクトリーダーの阿部氏)

組織の紹介

本インタビュー連載第5回にてご紹介した「株式会社ガイアックス」にて10年にわたり開発・運用していた社内SNSサービス「エアリー」。この商品部門を分社化する形で2017年4月に誕生した会社がEDGEである。
 「エアリー」は、組織のコミュニケーション促進を目的としたソリューションであり、社長と現場のアルバイト、本社と遠方の支社メンバーなど、直接会う機会の極めて少ない人同士が円滑にコミュニケーションを取れるようにすることで、業務効率や生産性が高まる。またそれだけでなく、前向きになれたり、救われたり、幸福度が高まるなど、ES向上・離職率低下に大きく寄与する。
 「SNSを使っている社員の人生がより豊かになり、仕事の時間に喜びや輝きを増やしたい。」という理念の下、やる気に満ち溢れた若いメンバーが集まっている会社である。

スタート時、メンバーの気持ちを一つにしたのは「コミュニケーション」だった

ベンチャーとして独立し、スピード感を持った経営によって、志を一つにした少数精鋭のメンバーで大きな成果を挙げる。そして上場を目指す覚悟を持って分社化にあたった当時の佐原氏。そのためには、一人ひとりが自ら考え、責任持って行動できるようになる必要があると考えていた。
 しかし、ガイアックスで10年エアリーに携わっていた一部のメンバーは、その安定した事業の延長線上に分社化があると考えていた。分社しても今までと同じように大きな船に守られており、同じような仕事をしていればよいと感じていたため、ギャップが生じた。
 佐原社長には、メンバーとの意識のズレに薄々気づきながらも、ここで経営者の想いをぶつけると、転職されてしまうのではないか?人が抜けたら事業が回らなくなるのではないか?という恐れがあった。
 そのため、そういった人に対しても、なんとか慰留し、とどまって仕事をしてもらえるように進めていた。

しかしそのような進め方では、ベンチャー気質をなくしてしまうということに気づいた佐原社長は、そのギャップに目を背けることを止め、分社化の意義、自分の考えを、自分の言葉でありのままにメンバー全員にぶつけたのである。
 「この話を聞いて、引き続きEDGEに残りたいと思う人だけ、その意志を話しに来て欲しい。」
 「方向性がずれている場合はお互いのためにならないので、転身も止めない。」
 想いの方向がずれていることに目をつぶって進んでも、会社とメンバーの気持ちは離れ、それが不満につながり、お互いにとってハッピーではない。別の道を選ぶことは決して後ろ向きではなく、前向きな選択になると捉え、メンバーが離れることも受入れた。

さらには、自社サービスである社内SNS「エアリー」を使って、「会社として従業員に対しどういう行動を期待しているのか」「会社として何にプライオリティを置いているのか」など、佐原社長が大切にしている価値観を定常的な連絡の中に入れ込み、発信し続けた。

その結果、佐原社長と価値観が共有化できたメンバーが残り、そして新たなメンバーも集まった。
 さらに、この活動を通じて、佐原社長が思う会社としての舵取りと、メンバーから会社への期待値をすり合わせることが出来た。

このようにEDGEは、佐原社長とメンバーの想いの方向性を力強く重ねて、メンバー全員が自分自身の力を存分に発揮するエネルギーを蓄え、スタートを切ることができた。

社長の想いが伝わり、満足度が3ヶ月で約20ポイント向上

このようなスタート時の価値観を共有する活動は、ESの向上に大きな結果をもたらした。
 会社としてどのような方向を向いているかを社長の言葉で伝えたことで、会社に対する満足度が、たった3ヶ月で51ポイントから68ポイントに跳ね上がったのだ。
 会社の方向性が見えることで、自分の仕事に対する誇りや、幸福度が上がった結果だという。

経営者の想いをダイレクトに伝えること、それは難しい技術も、長い経験も、高いコストもいらない。
「想いを伝える」、ただそれだけのことが、満足度・幸福度を高め、大きな成果につながる。

なぜならば、指示されて動くのではなく、経営者の目指す方向性を理解し、自ら考え動くことで次のような心理的効果が生まれるからだ。
 ・責任感が向上する
 ・達成したときの喜びや働き甲斐を強く感じられるようになる
 ・仕事が楽しくなる
 ・満足度が向上する

このように、自分が納得して動き、自由に目標達成に向けて活動できれば、それは自ずと成果につながるに違いない。

コミュニケーションの力がここまで重要なものであることを知って、「人」に対する施策の重要性を改めて感じると共に、「人」が形成する社会の暖かさのようなものを感じた。後述するが、これこそがEDGEの提供する社内SNSサービス「エアリー」の真髄なのである。

リーダーと部下の「対話」の様子
(社内に掲示されているスローガン)

みんなで決めた、会社のテーマと行動指針

会社のテーマと行動指針は、経営層が決めたものではなく、メンバー自身が「自分達がどうありたいか」を話し合って決めたものだ。
 自分達の想いを込めて作ることによりメンバー全員が会社を動かしているという責任感と会社への愛着を持つようになる。
 スタート地点からこのような想いで始まっているのだから、一人ひとりが自律し、業務に邁進していることは容易に想像できる。

テーマ、行動指針についてご紹介する。

【テーマ】人は、もっと輝ける 
 仕事に喜び、輝きを増やしたい。そのためにはコミュニケーションが重要。コミュニケーションを通じて人が育ち、いきいきと学び、働ける場を作りたい。お客様が当社サービスを使って輝いてくれることが、自分達の行っていることの価値であるとの想いから、このテーマが生まれた。

【行動指針】

リーダーと部下の「対話」の様子
(EDGEメンバー全員で考えた「行動指針」)

@Opinions:組織に対し遠慮なく意見を言う
  「遠慮や忖度があって経営方針を決めるより、全部出してもらった状態で経営の意思決定をしたい」と佐原社長。顧客やシステム
 に一番詳しい現場のメンバーから出る意見こそ重要との想いから、遠慮なく意見を出してもらう。これが社長の考えである。
  そのため、社長とも普通にディスカッションできる環境づくりを行っている。もちろん、納得できないところは反対意見も言え
 るようにしている。これにより、メンバーは「やらされている感」なく、納得感をもって業務ができているという。
  逆に、経営情報も全員に開示している。メンバーにとっては、「隠されていない」という安心感があるそうだ。価値観の共有が
 しっかりとできている。

AResponsibility:自身の目標に、納得し、コミットする
  組織との双方向のコミュニケーションを通じて決めたことには、個人として責任もってコミットする。経営を知り、自分で考え、
 指示を待たずに行動する。
  これが、EDGEのワークスタイルになっている。
  組織が勝手に決めたことではなく、自分が納得し、コミットしたこととして、結果を出す。後述するが、やり方や管理手法は自由度
 を高くしているため、各自が責任もって決め、実行する必要がある。組織が個人を信用し、一人の事業者として「自分」という会社の
 経営を任されているようなイメージである。
  やる気のあるメンバーのモチベーション向上に繋がるのは間違いない。

BImprovement:良い結果も悪い結果も受け止め、改善する
  もちろんメンバーには様々な意見がある。そのなかから選択し、トライアンドエラーで改善していく。多くの意見があることで多様
 化が進む一方で、決まったことが自分の意見と違うものになることも当然ある。そのような場合でも、当事者意識をもってコミットす
 ること、そして失敗しても、それを認めて進んでいくことを重要視している。
  一般に、悪い結果を受け止めるのは難しい。しかし、EDGEメンバーにかかれば、それは成長の糧になりエネルギーに変わるので
 ある。

以下、具体的な施策をご紹介する。

「完全な性善説」をベースにした様々な施策:

価値観の共有を土台として、活動の一つひとつがメンバーの納得を得て、満足度の向上に繋がっているEDGE。

経理・給与事務・サーバ保守等の周辺業務は親会社に委託し、働く人間全員がコア業務に集中することで、以下に紹介する自由度の高い施策を可能としている。

また、これらの施策は、経営者が従業員を信じ、従業員全員が一体感を感じてこそ成し得る「完全な性善説」であることに注目したい。

@フルリモートワーク
  どんな職種でも、フルでリモートワークできるようにしている。
  通勤による疲弊を回避し、業務に集中して欲しいという趣旨だ。特にエンジニアの利用率が高いという。唯一出社を必要とするのは
 火曜日の全社定例会の時間のみ。連絡には自社サービス「エアリー」を使うことで、経営者にとっては指示を出したり進捗を把握した
 りすることができ、従業者間においてはチームの情報共有や連絡が容易にできるなど、コミュニケーションに不都合は無い。
  「働き方の多様性、自由度を極力【性善説】に立って認めていくようにしている。」と佐原社長。完全な性善説に軸足を置いて、
 ルールで縛り付けていないとのこと。
  課題となる運用面でのセキュリティについては、個別にリスクを判断し、やはり性善説に振り切るのか、それともルールを作るの
 か、判断しているそうだ。
  「性悪説に則った運営をしたくなかった。常識と良心を持っていれば大丈夫ではないかと思い、性善説に倒してスタートした。」
  この佐原社長の判断は、分社化の際に腹を割って話し合い、同じ方向を向いているメンバーに対する強い信頼があってこその判断
 だと言える。
  メンバーとしても、ここまで信用され、任されていれば、意識せずとも一体感は高まり、ロイヤリティが向上するのは間違いない。
 まさに、「北風」ではなく「太陽」の施策と言える。

A個人に合わせたキャリアプラン、報酬制度、評価手法
  ベンチャー企業として、思い切りの良い施策ができるのがこの部分である。
  EDGEでは、メンバー個別に、3ヶ月に1度以下のような内容について面談し、個別にキャリアプランと報酬制度をカスタマイズして
 いるという。
  ・この会社にいる意味
  ・ライフプラン
  ・自分の人生で何を成し遂げたいか
  ・会社に何を期待しているか

 出来たばかりの会社で、働く人々の年齢層も若いので、キャリアプランの参考となるロールモデルは提示できない。そのため、
 本人のライフプランや、「こうなりたい・こうありたい」という姿を、評価者が一緒になって作っていくのである。
  また、「本人の納得感のあるフィードバック」を心がけている。3ヶ月に1回面談・評価し、複数の評価者の評価をまとめ、社長
 自らが各人に納得性のあるフィードバックを行っている。教科書にあるような方法で、評価ランクをあらかじめ作り、人事考課の
 表に落とし込む手法は楽かもしれないが、それだと個人個人に合ったキャリアプランを個別に設定できないため、評価制度もフレ
 キシブルにしているそうだ。
  「なかなか大変です」と話す佐原社長の笑顔に、メンバーへの愛情を感じた。

インタビューに答える佐原社長、阿部氏
(インタビューに答える佐原社長、阿部氏)

B働く時間の自由度を高めた労務管理
  労働時間を削減することだけを目的にしてしまうと、仕事によって成長したいという人に応えられない。若いうちに極力働くこと
 で成長したいという価値観の人もいる。
  たくさん働いて成長したい人もいれば、出来るだけ効率よく働き、それによって生まれた仕事以外の時間を大切にしたい人もいる。
 そのどちらにも答えられるように、法定ギリギリまで働いたとみなし、その分の残業手当をつけるようにし、自由度を極力高めるよ
 うにしている。
  「共働きで、妻も育児が大変なので、自分も家事しながら仕事ができるという自由度がありがたい。これにより、なんとかこなせ
 ている。」と阿部氏。多数の業務において責任者を任され、超多忙の身でありながら、業務について楽しそうに語る阿部氏から、
 会社に対する満足度の高さが伝わってくる。

C斜め掛けのメンター
  成長曲線を右肩上がりにするためには、結果を出す必要がある。たとえ仕事の進め方では働く人間の裁量で、のびのびと働けるよう
 に自由度を高めたとしても、結果は出さなければならない。
  そのため、「アメとムチ」それぞれのマネジメントが必要となる。このムチの部分に関してはフォローが欠かせない。
  EDGEでは、メンバーは様々な職務を担当し、そのため自分をマネジメントする人が複数いることになる。例えば営業職であれば、
 営業マネージャ、商品プロジェクトリーダーなど、メンバーをフォローするマネージャが複数いる。そのため、相談・アドバイスも
 しやすく、ガス抜きしやすい環境にある。
  若手などは、職場環境の居心地がわるくなると、その思いだけに取り付かれてしまうことがある。そのようなときに、斜め掛けの
 メンターをつけるなど、悩みを開放してあげることによって、モチベーションを上げることにもつながる。 また、3ヶ月に1回、ガス
 抜きの機会を設け、評価者と被評価者の関係の無いメンバーにより不満を聞く機会も作っている。

D年末年始の長期休暇
  私生活支援の一環として、また、社員への日々の仕事への恩返しとして、年末年始の休みは極力長くしている。2017年はなんと
 17連休。帰省ラッシュのストレスもなく、家の大掃除に貢献できたり、実家に帰ってゆっくりリフレッシュできたりなど、多くの
 メリットがある。家族に理解してもらって働いてもらうことで、職場に対する満足度も印象も変わる。
  長期休暇の間は、サポート業務は休業、システムの死活監視は外部に委託する形での運用だ。年末年始の時期に4~5日休みを増や
 しても、もともと挨拶回りなどが中心となる時期でもあり、営業成績には影響が出ない。
  また、会社としてはキャッシュアウトゼロでESが上がるため、コストパフォーマンスの非常に高い施策である。他社から羨ましが
 られるという点も、働く人間に「良い職場で働いている」感を持ってもらうという点で、満足度向上につながる重要なポイントにな
 るだろう。

 「完全な性善説」による自由な働き方、これは大変勇気のいる施策である。価値観の異なる多くの人間が混在する組織で実現する
 ことはとても難しい。
  しかし、EDGEではこの難しい施策が、敢然と実施、運用されている。
  これを可能にしているのは、経営層と従業員との強く太い心のパイプであり、それは丁寧なコミュニケーションによりのみ成し得
 ることなのだ。

商品である社内SNSサービス「エアリー」について:

EDGEが提供している社内SNSサービス「エアリー」。当初は、情報共有や業務効率化を主目的としたサービスだった。しかし、多くのお客様の事例に触れるうち、社内SNSがES向上に大いに寄与することが分かってきた。
 そこで、今では、ES向上、離職率低下に役立つことをメインに押し出して、他社には無い人事領域でのITを活用した課題解決に特化したサービスを展開している。

EDGEの提供するSNSサービス「エアリー」
(EDGEの提供するSNSサービス「エアリー」)

@サービスの種類
  次の3つのSNSサービスを提供している。
   ■エアリー:社員同士のコミュニケーション、情報共有を支援
   ■エアリーフレッシャーズ:内定者とのコミュニケーションや新人研修等で活用
   ■エアリーダイバーシティ:女性の育児休業時のフォロー・復職を支援

  発売開始当初は「エアリー」のみであったが、お客様からのリクエストに応える形で、サービスが増えて誕生した形態である。
 商品の詳細は、EDGEのWebサイトにて確認できる。

A導入効果
  ESが劇的に向上する。コミュニケーションがとれるだけで、人は前向きになる。業務効率・生産性も向上し、業績向上に繋げる
 ことが出来る。
  例えば、育児休業から復職された女性が、周辺に同じ境遇の人がいない場合に、相談できずにネガティブ思考に陥ってしまうこ
 とがある。その場合、別の拠点にいる同様の経験をした人が相談を受けられることがある。そこを繋ぐ。ITはそのためのツールで
 ある。実体験をもとにしたノウハウは強力である。知識や知恵が共有され、相談した人間は勇気付けられる。また、相談を受けた
 人間の自己効力感(自尊心)は向上する。その結果、働く人々の満足度はあがり、仕事が長く続けられることにつながる。
  また、経営者サイド、マネジメントサイドとのコミュニケーションが取れるようになり、それが社員の満足度・幸福度の向上に
 つながる。EDGEで行われている様々なコミュニケーション自体が、何にも勝るお手本となっている。
  現場のアルバイトはトップの考えを知るような機会は少ない。また、逆に「現場の生の声」は、なかなか経営者に伝わらない。
 その距離を一気に縮める。経営者が自分の生の言葉を伝える。アルバイトから現場におけるアラートを上げることもできる。これ
 らのことが手軽に出来るようになる。
  他にも、同じ職場で働く普段は会わないメンバーから労をねぎらわれ、それによって承認欲求が満たされ、モチベーションの向
 上にも繋がることがある。
  これらのような報酬以外のインセンティブが発生し、それが大きな価値を生み出すことにつながる。
  そしてもちろん、働き方改革の一つとしてリモートワークが更に拡充される。コミュニケーションツールとしてだけではなく、
 情報共有ツールとしても便利に使うことができるからだ。結果として、業務スピードが向上するのは容易に理解出来るだろう。

B情報のセキュリティ
  個人情報を多数扱う機会があることから、企業として、プライバシーマークを取得し、個人情報の保護に努めている。定期的に
 脆弱性診断を受けていることに加え、お客様である金融機関から年ごとの委託先監査を受け、厳しいチェックに合格している。
 また、資料請求されたお客様には、セキュリティへの取組を説明した資料も送っている。

C商品の特徴
  「社内SNSがあるのは知っているが、使ったことは無い」という人はとても多い。実は筆者もその1人。良さそうだとは思って
 も、あえて手を出さなくても間に合っているという感覚がある。
  このように、どんなに素晴らしい社内SNSを導入しても、みんなが使うことで定着させないと意味がないのである。
  そのため、初期段階での運用のサポートや、多くのノウハウの提供等により、寄り添って、共に走るサービス形態をとっている。
  また、企業ごとの特性を踏まえた、使い方のコンサルティングサービスも行っている。 入れっぱなしにせず、一番大変な運用の
 定着までサポートする、それが多くの顧客から長く愛される所以である。

最後に

「働き方改革」の潮流の中で、労働生産性追求のための様々な取組みが、各企業において勢いを増して走り出している。
 しかし、生産性を向上することを主目的とした施策の裏側で、置き去りにされているものはないだろうか?人が動き、成果を出すために必要なエネルギーは、食事だけでは摂ることができない。働くことの喜び、満足度、達成感といったものも、重要なエネルギー源であるのは間違いない。それを生み出すために必要なのが、経営層も含めた働く人間同士のコミュニケーションである。

もちろん、生産性を高めるための様々な制度が、目に見える形として、ESの向上に寄与している面も確かにあるだろう。
 しかし、そのような生産性を高めることばかりを見て頑張り続けていると、納得感が得られず、心が乾燥し、型にはまって指示された仕事を淡々と行うだけの日々になりかねない。「自分が考え、納得したことを自分がやっている」と思えてこそ、そこに魂が宿って、活き活きとした仕事、充実した日々につながっていく。そこから目を背けてはならない。 皆さんは、コミュニケーションが希薄になった組織で、「朝起きて、今日も仕事に行くのが楽しみだ」と思えるだろうか?

人が集まっての社会。そこで働き、生活する人々の「心」や「気持ち」の部分が満たされることは、社会全体の満足度・幸福度の向上に欠かせない要素である。これ無しでは、どんなに自由度が高く、賃金の高い企業であっても、働く人間の真の喜びにはつながっていかない。もちろん、「心」や「気持ち」の部分は、個人個人の価値観によっても違いはある。しかし、「人」である以上、誰しも人とのつながりによって得られる心の充足が必要なのは確かである。

今回のインタビューを通じて、コミュニケーションが人の心に与える影響の大きさに気づかされ、またコミュニケーションの力を意図せず過小評価してしまっていた自分にも気づかされた。
 コミュニケーションによって「心」「気持ち」を充たし、それにより働く人々の幸福感の連鎖を生みだす。そして、その結果として、お客様の満足感も高まるレベルの高いサービスが提供できる。働く人間のESの向上は、世の中のハッピーを生み出す源泉なのかもしれない。

私たち、JNSA「組織で働く人間が引き起こす不正・事故対応WG」で今回行っている一連の調査は、「働く人間を幸せにする職場では、内部不正などの組織事故を引き起こそうとする人間が出る確率が小さくなる」という考えに基づき、世の中の組織が、自らの職場を「人が活きいきとやりがいを持って働ける環境」にするために、どのような施策を実施し、どのような工夫をしているかを掘り起こし、その知見を共有することに意味がある、として活動している。
 今回のインタビューでは、組織にとって「コミュニケーション」がいかに必要であるかを思い出させてくれた。
 しかし、「コミュニケーション」は手にとって触ることができない。また、その効果は、定量的な測定がなかなか難しくもあるため、ともすると「コミュニケーション」のための施策は、後回しになったり、見落とされたりする。

「仕事」を、単に「日々の糧を得るための手段」(我慢の時間)だと考えていると辛くなる。一方、同じ「仕事」であっても、人生を形作る大きな要素として「自分の思い描く人生を作り上げるための手段」と位置づけることが出来れば、自ずとそれへの向き合い方が変わる。結果として、やる気や満足度も良い方向に変わってくる。
 このような形で、個人の人生形成のために目指す方向性と、会社が目指す方向性とがリンクする部分が明確になると、「仕事」を「双方にメリットのある活動」「Win-Winの関係を作る活動」としていくことができる。
 EDGEでは、これが相当高いレベルで実現できている。 経営を含めた組織全体が丁寧に個人と向き合い、コミュニケーションを取ることの重要性を理解し、実践しているからである。

世の中には、「若い世代はメールやSNSだけで連絡を取り合い、コミュニケーションが希薄になっている」という意見も散見される。しかしながら、EDGEの施策や、活きいきと働くメンバーの姿は、この考え方が必ずしも的を射てはいないことを教えてくれる。
 SNSなどの現代のコミュニケーションのツールは、速さ、便利さ、時間の自由度を伴って人と人とを繋げる。使い方を誤らなければ人々の「心の満足」につながる「大いなる価値」を生み出す手段になりうるのだ。
 「呑みにケーション」も悪くない。しかし、SNSなどのITの力を使ったコミュニケーション手段は、Face to Faceのコミュニケーションが宿命的に持つ様々な制約を超える形のコミュニケーションを実現する潜在力を秘めている。
 SNSによるコミュニケーションの力を、もっと信じてみたいと思う。

 


 
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