クレデンシャルの歴史

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5. クレデンシャル昔話

人類はいつクレデンシャルを考え出したのでしょうか?使い始めたのでしょうか?

・タトゥー

「モアナと伝説の海」[6]という映画をご存知でしょうか?ディズニー制作の2016年の映画で、伝説の英雄マウイと主人公の女の子(モアナ)との冒険を描いています。その映画の中で登場する象徴的なクレデンシャルはタトゥーです。伝説の英雄マウイやモアナが暮らす村の人は皆それぞれ個性的なタトゥーを身につけています。個人を唯一識別するという意味でタトゥーもクレデンシャルと言えるでしょう。また、タトゥーの中に様々な属性情報が表現されていたり、部族ごとに独自性があったりと、単なる模様やファッションというより、タトゥーがその人自身を表すアイデンティティのように扱われています。「モアナと伝説の海」のタトゥーに関しては、「ディズニーのハロウィン衣装にマオリ族が抗議「死んだ人の宝石を着けるようなこと」 | ハフポスト」[7]という記事もあります。記事の中では、「(マオリの)タトゥーは神聖で、身につける人にとって唯一のものです。それはアイデンティティであり、家族の起源や個人の功績、歴史を象徴するものなのです。ですから、それをコスチュームとして着るというのは、よくないことなのです」という人権擁護団体の方からのコメントもあります。「アイデンティティである。」「家族の起源や個人の功績、歴史を象徴する」タトゥーは大切かつ唯一のもので大切なものなのですね。クレデンシャルって奥が深いですね。

マオリ族の活動家 Tame Wairere Iti氏
(参考:(マオリ族のタトゥー Ta moko - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/T%C4%81_moko)

・印章・判子

また、シュメール初期王朝時代のメソポタミアや[8]、秦・前漢時代の中国[9]では印章、判子が利用されていました。国と国との重要な手紙や契約などには、当時の王や権力者の印章が押されていました。手紙が確かにその本人・権力者が書いたもの・内容を確認したものと証明するために利用されていました。最も古くからのクレデンシャルといえるでしょう。

シュメールの円筒印章(右)とその印影(左)
(参考:ルーヴル美術館 https://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/王−祭司の円筒印章

古代中国の印による封泥 
(参考:東京国立博物館 https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=TJ3061

例えば、ヨーロッパを舞台にした映画などでは、よく手紙の封蝋(ふうろう)[10]などが登場します。溶けたロウの上から印を押し付けることで封蝋を作り、確かにその印の持ち主が手紙に封をした、つまりその人からの手紙であることを保証する仕組みとして利用されていました。

消印は、手紙が出された日時を証明するという意味でクレデンシャルといえます。

企業の業務のデジタル化の際によく出てくる判子もアナログクレデンシャルの代表だといえるでしょう。認印から始まり、実印や印鑑証明、届印など用途に応じたアナログのクレデンシャルの代表といえます。個人用の印鑑に加えて、法人の社印などもありますので、必ずしも個人だけを証明するものに限りません。ただ、あまりにいろいろなところで使われすぎていて、かつ物理的な存在であるアナログクレデンシャルですので、テレワークやリモートワークとは相性が悪そうです[11]。割印などがあまり使われなくなっているように、未来には判子も博物館に飾られる文化遺産になっていくのでしょうか?


[6] :
作品情報|モアナと伝説の海|ディズニー公式 https://www.disney.co.jp/movie/moana/about.html
[7] :
ディズニーのハロウィン衣装にマオリ族が抗議「死んだ人の宝石を着けるようなこと」 | ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp/2016/09/20/disney-maori-moana_n_12111704.html
[8] :
王−祭司の円筒印章 | ルーヴル美術館 | パリ
https://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/王−祭司の円筒印章
[9] :
古代中国の印による封泥
(参考:東京国立博物館 https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=TJ3061
[10] :
封蝋 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/封蝋
[11] :
「脱ハンコ」へ整備加速: 日本経済新聞 https://r.nikkei.com/article/DGKKZO59355130Q0A520C2EE8000?s=5

 
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