共催者インタビュー第7回(2006.12)
財団法人 ハイパーネットワーク社会研究所(大分)

今回は、財団法人ハイパーネットワーク社会研究所の研究企画部長代理渡辺律子氏にお話を伺いました。同研究所は初年度(2003年)からインターネット安全教室を共催され、大分県だけでなく九州地域の取りまとめ役として、他県での開催にも協力されています。その経験を踏まえ、インターネット安全教室を開催する意義をはじめ、情報セキュリティの啓発・教育活動、さらに情報モラルの考え方を含めた貴重な提言を頂きました。
インターネット安全教室初年度から開催
Q:インターネット安全教室の実施の経緯について教えてください。
本研究所は、よりよい情報社会(ハイパーネットワーク社会)の構築をめざし、情報インフラの整備やその利活用について、調査研究活動を行ってきました。特に大分県では、県内の光ネットワークである豊の国ハイパーネットワークが2000年から構築され、その後、それを効果的に活用するにはどうしたら良いのか、また、ネットワークを利用していく上では色々と注意すべきことがあるのではないかということが、次の課題として上がってきました。私自身、情報教育が専門で、短大で非常勤講師を務めているのですが、小中高の学校の先生方と情報交換をする中で、学生が自由に書き込みできる掲示板で、個人への誹謗中傷がエスカレートして大問題となったことがありました。そうしたことから情報インフラは活用だけに重点を置くのでなく、同時に情報モラルの啓発・教育活動が不可欠だという思いを強くし、県内の学校や先生方、保護者の方々に、その必要性を普及啓発する活動を私個人の研究活動として始めました。2001-2002年当時は、こうした情報モラルに関する具体的な啓発活動は全国的に見ても少なく、先生方も何から手を付けてよいか分らない状態でしたし、教育委員会や学生の保護者の方からも相談を受けることがたびたびありました。
そして、この情報モラルの啓発と合わせて、ネットワークをはじめ情報インフラを安全に利用するにはセキュリティ対策が欠かせないということとなり、そのための具体的な活動を考えていた矢先の2003年に、経済産業省とJNSAがインターネット安全教室の開催を公募されたことを知りました。その趣旨が研究所の活動方針とまさに一致していたことから、是非とも開催したいということで、申し込みをした、というのが開催のきっかけです。なお、情報モラルというと道徳やマナーと混同されがちですが、ネットワークを介した相手を尊重することに加え、技術の活用、情報社会ならではの特徴を知ること、法律を知ること、などを含めて、私達は情報モラル教育と考えています。
経済産業省の情報化促進貢献表彰で局長表彰を受賞
Q:安全教室では九州の他県での開催にもご協力いただいておりますが、このほど経済産業省の情報化促進貢献表彰で局長表彰を受賞されたそうですね。

経済産業省商務情報政策局長表彰(情報セキュリティ促進部門)の受賞は、九州各県でのインターネット安全教室の開催と共に、教育現場における情報モラルの普及や啓発活動を行ってきた点を評価していただいたのだと思います。
1年目は、大分県だけの開催だったのですが、2年目には県内でも1ヶ所ではなく、複数での開催を目指しました。このインターネット安全教室の運動には、多面的な展開が必要だと考えたのです。それで、3年目には大分県内だけではなく、九州エリア全域での推進を行いました。
九州内では、情報化に取り組んでいる組織やコミュニティ、研究者間のネットワークがあり、盛んに情報交換を行っています。そこでインターネット安全教室の普及を進めたわけです。これまでもさまざまな研究活動でつながりがあったことから、今回の連携がうまくいったのだと思います。
情報化弱者の方々をしっかりとサポートできる体制づくりをめざして
Q:これまで4年間の活動を通じて、参加者の変化はありますか?
これまですでに合計10回(2006年10月現在)の開催に共催・協力していますが、開始した当初は、全国的にも初の取り組みということもあり、珍しさも手伝ってかなり幅広い層の方々が参加されていました。また、前述のように、安全教室のような情報モラルを含めた具体的な啓発活動は全国的に見てもほとんど皆無でしたから、その意義はとても大きなものであったと思います。開始から4年が経過して、まず感じるのは、セキュリティに対する認識がかなり浸透してきていることですね。そのためか、大分だけで見ると参加者も若干、減少しています。ただ、これは関心が薄れたのではなく、基本的なレベルは自分でも十分にクリアできていると考える方々が増えたためだと考えています。今では、情報セキュリティに関する知識や対策は、ビジネスマンの方々は職場で学ぶ機会が、また学生も学校を通じて学ぶ機会が以前よりも増えてきました。そこで最近の安全教室は、このような学びの場のない高齢者の方々がどうしても中心になっています。しかし、こうした場に参加される方々はまだ意識の高い人であり、こうした場に参加しない人に、いかに関心を持ってもらい、参加してもらうにはどうすればよいかを考えることがこれからの本当の課題と考えています。
Q:安全教室を含めてセキュリティ意識の全体の向上には、そこが今後の大きなポイントになると?

教室に足を運んでもらえない方々の問題については、すでに一昨年から検討を進めています。今、取り組んでいるのは、各地域におけるさまざまな団体において、まずリーダーとなる方を育成することに力点を置いています。これは当研究所が委託事業とは別に行っている自主的な研究活動の一つなのですが、例えば、NPOの情報化、情報セキュリティ対策支援を目的に、シニアの方々、障害者の方々、子育て支援を目的としたそれぞれのNPOを対象に、自前の講師を育成できるようにするための取り組みや講座の運営を支援しています。これにより、一般に情報化における弱者とされている方々も、しっかりとサポートできるような体制を作ろうとしています。
現在、インターネット安全教室まで足を運ばない方々に、セキュリティについて感心を持ってもらうために、情報セキュリティのポイントをまとめたドキュメントを通常のパソコン操作を習う講習会で見てもらうなどの活動をまさに進めているところです。こうした活動がどのような成果につながるのかは、今後楽しみなところですね。これは安全教室とも相互に関係することですが、一度教室に参加しただけでは分らない方も少なくないので、教室で聞いた話を自分の知識としていただくためにも、いかに個々の方をサポートできるかがリテラシーを向上させていくための鍵だと思います。
Q:ハイパーネットワーク社会研究所さんの活動について教えていただけますか?
研究所は1993年3月に総務省(旧:郵政省)と経済産業省(旧:通商産業省)の認可により設立された財団法人で、ネットワーク構築における技術的な課題についての調査研究や実証実験、そうした技術をどのように活用していくのか、また、市民生活とどのような関わりがあるのかといった情報社会学的な観点の2つを大きな研究の柱としています。国の研究機関がなぜ、大分にあるのかと不思議に思われるかもしれませんが、大分県では1980年代の半ばにパソコン通信「コアラ」が発足して、これを通じて県内のデータベース(統計、生涯教育、図書館などの施設)との接続を可能にした「豊の国ネット」が早くから構築され、インターネットが一般化する以前から情報化の先進県であったのです。それに注目した理事長の公文俊平が中心となり、あえて大分県を拠点とした研究所が設立されました。こうした経緯から、私達が標榜しているのは、「ローカル(地域)から発想し、グローバル(世界)に展開する」ことで、大分を実証実験の場としながらも、その成果を全国、さらには世界へと展開することを目標に、地域に根差したユニークな研究活動を行っています。
名称: |
財団法人 ハイパーネットワーク社会研究所 |
URL: |
http://www.hyper.or.jp/ |
住所: |
〒870-0037大分県大分市東春日町51-6 大分第2ソフィアプラザビル4F
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TEL: |
097-537-8180 |
FAX: |
097-537-8820 |
E-mail: |
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