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共催者インタビュー 第6回(2006.11)
財団法人ひょうご情報教育機構/カーネギーメロン大学日本校事務局(兵 庫)

今回は、兵庫県における「インターネット安全教室」実施の経緯と取り組みについて、財団法人ひょうご情報教育機構の松浦幸浩氏にお話を伺いました。財団法人ひょうご情報教育機構は、兵庫県が誘致し、2005年6月に開学したカーネギーメロン大学日本校(CMU日本校)の事務局ともなっています。同大学は、米国においてコンピュータ・サイエンス分野をリードする教育・研究ノウハウを持つことでも知られています。松浦氏は「CMU日本校が担う情報セキュリティ分野におけるトップレベルの人材育成と共に、インターネット安全教室などを通じた一般の方々を含めたリテラシーの向上につなげて行きたいですね」とインターネット安全教室に対する熱意をうかがわせていました。
情報セキュリティ県民セミナーとしてインターネット安全教室を開催
Q:インターネット安全教室の実施の経緯について教えてください。
 兵庫県では1995年の阪神・淡路大震災の後、安全・安心な社会の実現のためさまざまな取り組みを行ってきました。情報セキュリティ対策やインターネットの安全利用の促進といった活動も積極的に推進しています。特に最近は、情報セキュリティへの対応能力がとても重要なものとして位置づけられていますが、一方で、情報セキュリティ対策に必要な人材は非常に不足していて、その育成が急務です。そこで、兵庫県の主導で誘致したのが世界中で実際に情報セキュリティについての最先端の研究開発や運用を行ってきた教育・研究スタッフを抱えるカーネギーメロン大学です。そのような経緯から、ひょうご情報教育機構は兵庫県とCMU日本校の趣旨に賛同していただいた多くの民間企業とのパートナーシップにより設立されました。ひょうご情報教育機構の最も大きな役割はCMU日本校の運営です。財団が運営するCMU日本校は、修士学位(情報技術-情報セキュリティ)の提供を通じてトップレベルの人材育成に貢献していますが、財団のもう一つの役割がネットワーク社会で安全・安心な社会を実現するため、一般の方々を含めた全体のセキュリティ意識の向上を図っていく広範な取り組みです。情報化が進んで、今では一般の方々がインターネットをコミュニケーションの手段としてごく普通に利用することが当たり前となっている反面、コンピュータ・ウイルスや外部からの不正アクセス、個人情報の流出・漏洩といった情報セキュリティ面でトラブルに会うケースが増えており、時には自分だけの問題に留まらず、他人にも悪影響を及ぼすような深刻なケースに巻き込まれてしまうことすらあります。こうした中で、安全で安心な生活を確保していくにはどうすれば良いかを考えた時、何より必要なことはコンピュータやインターネットの利便性に潜むリスクや情報セキュリティについての理解を深めてもらうことです。最低限、これだけの対策はしておこうというように、それぞれの意識を高めていただくことが不可欠です。そのためにどのような活動をすれば良いのかを検討する中で、出会ったのが経済産業省とJNSAさんが開催しているインターネット安全教室でした。インターネット安全教室は一般の方々を対象に、情報セキュリティの基礎知識を身につけていただくことを目的としていますから、私どもが考えていた「情報セキュリティ県民セミナー」のイメージとピッタリ一致しました。そこでJNSAさんに教室の開催についてご相談し、講師の派遣をはじめとして、さまざまな形でご協力いただいて、兵庫県も共同主催者となり、昨年度は3回の教室を開催しました。今年度も3回の開催を予定していますが、これらはすべて「情報セキュリティ県民セミナー」として開催しています。
神戸を中心に県内5つの地域を順に巡回
Q:昨年3回、今年はすでに9月に開催されていますが、反響はいかがですか?
 まず、教室の開催についてですが、神戸市は必ず年に1回は開催するようにしていますが、それ以外は、県内の5つの地域を順に巡回していくように開催地を設定しています。当初は、神戸とそれ以外の開催地とでは参加者数の格差が少なからずあるのではと考えたのですが、思ったほどその差は大きくありませんでした。確かに神戸は人数だけを見ると100名近い参加者がありますが、他の開催地は絶対数は少なくても、人口の比率を考慮すると参加者の割合では神戸を凌ぐほどです。参加者の内訳についてですが、男女比としては8対2程度で、平日開催のためやはり時間の自由が利く年配の方々の参加が目立っています。ビジネスマンは少数派ですが、中には会社からセキュリティ対策や研修の一環として受講されるケースもあるようです。教材として受講者の方々の評判が良いのはやはりCD-ROMです。会場を暗くして上映しますが、居眠りをされる方はほとんどいません。 なお、参加を呼びかける広報・募集活動はチラシの配布、カーネギーメロン大学日本校(ひょうご情報教育機構)のHPのほか、県の広報誌への掲載とメールによる告知が主な手段です。このほか記者発表を行い、マス・メディアに取り上げてもらうということもあります。
本当に知識が必要な方にいかに参加してもらうかが課題
Q:今年はあと2回、開催を予定されていますが、今後の安全教室への取り組みや役割をどのようにお考えですか?
 やはり現在の課題は本当に情報セキュリティの知識が必要とされる方々に、いかに参加していただくかということですね。インターネット安全教室に参加される方々は、ある意味でセキュリティの意識をある程度はもたれている方です。なぜなら、日常コンピュータを使う中で、自分自身が何らかの危険を感じているからインターネット安全教室のようなセミナーに参加されるわけです。実際、アンケート結果を見ても、ウイルス対策ソフトをきちんと更新するなど対策もそれなりに行われている方が大多数です。逆説的ですが、「自分は被害にあうはずがない。だからセキュリティ対策なんて必要ない」と思っている方こそ、一刻も早くこういうセミナーに参加していただきたいわけです。ですから、こうした層の方々にいかに告知し、どうやって必要性を感じてもらうかが一番の課題だと思っています。 ひょうご情報教育機構では、カーネギーメロン大学日本校の教育プログラムによって情報セキュリティ分野におけるトップレベルの人材として育成していくと共に、このほど情報セキュリティ管理者・担当者などを対象とした「情報セキュリティ人材育成プログラム」を開設し、企業や自治体などにおけるリーダーの育成も目指しています。しかし、そうしたハイレベル人材の育成の一方で、真の意味で情報セキュリティ対策を浸透させていくには、社会全体のセキュリティ意識の底上げを図っていくことが不可欠です。そのための活動の中心がインターネット安全教室であり、県民の方々全体のリテラシーの向上という大切な役割を担うものと考えています。
Q:ひょうご情報教育機構さんが事務局をされているカーネギーメロン大学日本校について教えてください。
 前述のように、情報セキュリティへの対応能力がとても重要なものとして位置づけられてきた一方で、情報セキュリティ対策に必要な人材は世界的にも不足しています。そこで、情報セキュリティ分野のトップレベルの人材育成と、アジアにおける情報セキュリティ教育研究拠点となることを目指し、兵庫県の主導でカーネギーメロン大学の大学院日本校を神戸に設立しました。同大学は鋼鉄王と呼ばれた実業家として有名なアンドリュー・カーネギーが1900年に設立した「カーネギー技術学校」がその前身です。CMU日本校では、日本国内で米国大学院の修士学位を取得でき、学位の取得者は企業の情報セキュリティ責任者、コンサルタント、教育者や研究者など、情報セキュリティ分野のリーダーになることが期待されています。まもなく、CMU日本校に第1期生として入学した学生が卒業しますので、卒業生のみなさんが、情報セキュリティのエキスパートとして、世界中で活躍することを願っています。
名称: 財団法人ひょうご情報教育機構(カーネギーメロン大学日本校)
URL: http://www.cmuj.jp
住所: 〒650-0044 神戸市中央区東川崎町1丁目3-3 神戸ハーバーランドセンタービル17F
TEL: 078-360-6311
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