★☆★JNSAメールマガジン 第196号 2020.10.2☆★☆

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今回のメールマガジンはJNSA脅威を持続的に研究するWGにご所属の本川祐治様にご寄稿いただきました。

【連載リレーコラム】
Fake Newsにまつわる言葉の整理

JNSA脅威を持続的に研究するWG 本川祐治


コロナ禍においてSNSパワーが語られ、さらに米国大統領選挙も近づく中、「Fake News」にまつわる“言葉の整理”を通して、インターネットの安全・安心な利用を切に願います。
まず、「Fake News」について、現在では認知された言葉となっていますが、2016年米国大統領選挙において、現在の米国大統領トランプ氏が選挙活動中に使い始めた言葉です。トランプ氏が、自身にとって不利な報道内容を否定し、既存メディアを攻撃するためにSNS上で使い始めた点が特徴的です。
当時、既存のメディアが「地球温暖化が進行している」と報道するとトランプ氏は「Fake News」とし、その後のパリ合意離脱へつながりました。また、今回の大統領選でも話題の「ロシアによる大統領選挙介入」について「Fake News」とし、米国政府の研究機関やインテリジェンスの報告について否定した経緯がありました。

「Fake News」の語源はどこにあるかというと、「Influence Operation」と「Information Operation」だと考えます。「Influence Operation」は、心理作戦など第二次世界大戦頃から使われている政治戦略用語です。
「Information Operation」は「情報」を使う軍事作戦を意味しています。
私を含めたITの世界にいる人々は「Information Operation」というとコンピュータやインターネットを活用した作戦と勘違いしますが、「Influence Operation」を行うための幅広な「道具」や「仕組み」を使った作戦を「Information Operation」といいます。2019年時点では「Influence Operation」と「Information Operation」は同義に使われていますが、米国の知人は「正確な意味は違う」と認識した上で「マーケティングで分かりやすい言葉を選択しているだけ」と語っています。

政治用語の「Influence Operation」と「Fake News」をつなぐ言葉は、「Dis-information」だと考えます。この「Dis-information」とは、虚偽情報であり、「他者に害を及ぼす意図のある情報」、「他者を欺く情報」です。
本来「Fake News」ではなく「Dis-information」といえばよかったのでしょうが、SNS好きなトランプ氏がbuzzることを狙ったのかもしれません。

「Dis-information」は、虚偽すれすれの情報でSNS利用者を信じ込ませることに使われています。「Fake News」という言葉が生まれるきっかけとなった大統領選は米国の一大イベントです。ここでは「Influence Operation」の作戦情報として「Dis-information」のような情報が展開されます。ここで使われるSNSの特性を活用した手法が「microtargeting」です。私たちの利用しているSNSは、ほとんどが無償です。無償で利用できるのは広告主がいるからです。
いくつかのSNSは、運営会社が違っても広告代理店は共通だったりします。広告代理店は広告主の広告を効果的に展開するために様々な手法を用いて、SNS利用者の画面に広告や投稿形式で表示します。つまりすべての人向けに広告を打つのではなく、SNS利用者個々人向けの広告を打つ手法が「microtargeting」です。かつて、大統領選ではテレビや新聞の広告を活用していましたが有権者一人一人に言葉が届かないことが課題でした。各政党は「microtargeting」を活用することで、SNSを利用する有権者に「わが政党が、あなたに一番寄り添っている」と伝えることができます。前回の大統領選では、「選挙に関心がない20才青年」に向けて「大学費用免除などの政策広告」を表示し、「投票へ行こう」と広告。また、「テキサス州35才父親は銃保持支持派が多い」に向けた「民主党候補が当選すれば、銃規制が強化される」という虚偽のような広告が確認されています。このような「microtargeting」は従来メディアへの広告と比べてコストが安く、SNS利用の個々人に達することから今回の大統領選でも活用されています。

従来、「microtargeting」だけでは集団に対する影響力が少ないと考えられてきました。JNSAが行う啓発セミナでも「SNSで得た情報は、一次情報や周囲の有識者に確認しましょう。」と伝えています。しかし「Dis-information」が信じ込まれる状況が幾つか確認できています。「Dis-information」が明らかに虚偽で、それを否定する発言が出ているにも関わらず信じ込まれるという事象がありました。「microtargeting」以外の原因として、情報が過去の事件や事故に由来するなど「都市伝説は信じ込まれ、SNSで拡散される。」という傾向も指摘されています。過去例では「電子レンジに猫」「銀行倒産デマ」などがあります。しかしこれだけではないようです。インターネットにはSNS利用者が知りたい情報を集め伝える仕組み・機能があります。知り合いを探す機能が典型的です。昨今ではSNS利用者が自ら陥る「filter bubble」が虚偽を信じ込む原因ではないかといわれています。「filter bubble」とは、SNSや検索サイトの機能でSNS利用者の見たい情報に特化した結果、他の情報が遮断されて見えなくなっている状態をSNS利用者が泡の中にいるようだと名付けられた事象です。仲の良い友人や同じ志向の仲間同士も大きな「filter bubble」に囲まれている状態なので虚偽や間違いに気づけなくなっているのかもしれません。
コロナを経たニューノーマルでは情報の取捨選択が大切になります。今年のblackhat USAでも情報セキュリティとして大統領選が取り上げられていました。
私たちITの専門家には、情報の取捨選択を正しくして「Fake News」をつかまされない、賢い行動が求められています。

 

#連載リレーコラム、ここまで

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