JNSAメールマガジン 第68号 2015.8.28☆★☆
(海外市場開拓WGリーダー/株式会社インフォセック 樋口 健)
前回のコラムでは、海外市場開拓ワーキンググループ発足に至った背景と、その活動内容をご紹介致しました。今回は、ワーキンググループで取り組む最初のイベントとなった「RSA Conference Asia Pacific & Japan 2015」(RSACAPJ 2015)の模様を、舞台裏を含めてご紹介したいと思います。
WGの活動目標は、「Made in Japan」即ち日本独自のサイバーセキュリティ商材(製品やサービス)を海外市場に向けて拡販することにある。国内のセキュリティ事業者の中には、既に海外進出に取り組んでいる・海外販売の実績を有する企業も複数存在するが、多くのセキュリティ事業者のビジネスが国内市場に閉じているのも事実である。扱っている商材の種類(ハードウェア/ソフトウェア/サービス)によって海外進出に必要となる手立ては異なってくるが、共通課題としては以下が挙げられる。
海外市場を開拓するための人材、つまり商材知識と語学と市場開拓経験を併せ持つ人材が不足している。
一口に「海外市場」と言っても各地域・各国ごとに市場環境は異なる。しかし、各国のサイバーセキュリティに関する動向や法規制などについて、インターネット等を通じて得られる情報は極めて限られている。
初めて取り組む市場において顧客を獲得したいのであれば、当該市場に長けた販売パートナーを見つけるのが先決だ。日本のようにIT市場が成熟していれば、パートナー候補を見つけるのは比較的容易だが、未成熟な市場で信頼できるパートナーを見つけるのは大変難しい。販促資金を騙し取ろうとする怪しいエージェントにも警戒せねばならない。
幸運にもお客様第1号が見つかったとしても、納入する製品やサービスをメンテナンスできる体制が整わなければ販売することは出来ない。セキュリティ商材のメンテナンスには高度な技術知見を必要とする場合があり、現地保守パートナーを見つけることが難しい。
日本国内と海外市場では物価が異なるため、ターゲット市場に応じた価格見直しを必要とする。利益を確保するには商材のデリバリーコストを大きく削減する必要があり、最終的には賃金水準の低い現地社員による運営体制を整備せねばならない。
業界横断的な連携により上記課題の解決に取り組むのが当WGのミッションである。少数精鋭の市場開拓チームが自社以外の商材も「纏めて束ねる」ことで人材不足は緩和できるし、市場動向調査やパートナー開拓も、各社バラバラではなく協同実施することでコストとリスクを分散できる。とは言え、精鋭チームがゼロベースで各国市場に突撃するようなTry & Error方法では効率が悪い。そこで「海外展示会への出展」というアイデアが浮かび上がった。
各国のサイバーセキュリティ関係者が一堂に会するようなイベントに出展すれば、市場動向調査と人的ネットワークの開拓を同時に達成できる。しかし期近のイベントであるRSAC APJ@シンガポールは7月下旬開催で、準備期間が6週間しか無いという問題があった。
こうしてWGメンバーに参加を呼び掛けたところ、8社14名から参加表明があった。これだけの人数がいれば展示の準備も展示員も間に合いそうだ。しかし海外展示会への出展はJNSAとして初めての経験であり、事前準備は混乱を極めた。
そんな調子でバタバタと準備作業に奔走しているうちに月日は過ぎ去り、あっという間にカンファレンス開催当日を迎えた。リーダーによるブースプレゼン資料が完成したのは開催当日、7月22日の朝であった。
RSAカンファレンスAPJの開催期間は7月22日(水)から24日(金)まで。カンファレンスの来場総数は4,000人と予想されていた。WGメンバーは前日の21日にシンガポールに移動し、会場である超豪華ホテル「Marina Bay Sands Conference & EXPO」においてブース設営を行った。
そして翌22日の午前10:30、ついにRSAC APJが開幕した。会場の扉が開くと、来場者がどっと会場に流れ込んでくる。来場者の大半は米国系大手セキュリティベンダーのブースへと吸い込まれ、我がJNSAブースに立ち寄る人々は殆どいない。そこでいよいよ、客引きを兼ねたブースプレゼンの時間である。
15分程度の簡単なプレゼンだったが、モノ珍しさも手伝って来場者がJNSAブースの周囲に集まってきた。集まった来場者にすかさず話しかけるWGメンバーたち。英語力堪能なメンバーも若干苦手なメンバーも分け隔てなく、用意した総合カタログを片手に積極的に来場者をキャッチする。我々の話をフムフムと真面目に聞いてくれた来場者は、複数の製品パンフレットを抜き取ると「もっと詳しく話を聞きたいのだが誰にコンタクトすれば良いか?」と尋ねてくるので、名刺交換して追加情報の提供を約束する。実にナイスな展開だ。開幕して2時間ほど経つと、緊張が解れてきたせいかWGメンバーは更に積極的になり「カタログとパンフレットを持って会場を周ってきます!」と宣言して出撃していった。特に女性メンバーたちの活躍は目覚ましく、ブース前を通りがかる来場者を次々をキャッチしてブースに連れてくる。「余るかも知れないね」と予想していた200部のカタログが、初日終了時点で残り僅か50部。急遽追加で印刷を手配する。
翌23日と24日は、初日と比べると客足は少々落ちたが、WGメンバーの「ブースプレゼンをクイズ形式にして、少しだけ見映えのする景品を出せば盛り上がるんじゃ?」とのアイデアを採用してプレゼン資料を修正したところ、これが大当たり。追加で刷ったカタログ100部も最終日の終了時刻前に配布を終えてしまった。因みにクイズの景品は「JNSA設立10周年記念・ロゴ入り特製タンブラー」を有効活用させて頂いた。
3日間のブース来場者数は推定350?400名(カタログ配布部数から推算)、名刺交換した相手は170名に達した。準備不足をWGメンバーのチームワークでカバーした成果だと高く評価したい。ブース説明員の皆様、本当にお疲れ様でした!
展示会は「フォローアップ」が重要である。RSAC APJの来場者リストを元に重点フォローするべき相手を絞り込み、潜在顧客への追加情報の提供、販売チャンネルや現地メンテナンスに係わるパートナー候補との協議を進めていく。また、今回の出展が契機となり、他の海外展示会からも出展の打診を受けている。費用やリソースの制約上全ての誘いに応じることは難しいが、WGメンバーの意見を伺いながら次の出展計画を纏めていきたい。アジア市場のみならず北米市場をターゲットとした活動にも挑戦する計画である。
「Made in Japanのセキュリティ商材を世界に向けて打ち出す」という当WGの試みはスタートしたばかりで、具体的な成果が出るまでには紆余曲折あると思う。しかし途中で諦めずに根気よく取り組んでいきたい。例え一社一社の力が弱くても、団結すれば大きな力が発揮できる、そう信じて努力していく決意である。日本の強みは「品質」と「チームワーク」なのだから。
※当WGでは漸次メンバーを募集しています。海外市場に挑戦する意欲を持った方で あれば、どなたでも歓迎します。応援宜しくお願い致します!
【部会・WG便り】
★「JNSAセキュリティしんだん」vol.17を公開しました。
「米国におけるサイバーセキュリティ人材育成の現状からの考察」
https://www.jnsa.org/secshindan/
ぜひご覧ください。
★マイナンバー対応情報セキュリティ検討WGでは、10月5日(月)に主催セミナーを開催予定です。詳細は後日ご案内します。
【事務局からの連絡、お知らせ】
★JNSA設立15周年記念「JNSAセキュリティフォーラム in 岡山」
JNSA設立15周年記念イベントの一環として、今年は全国各地でセキュリティセミナーを展開します。
鹿児島に続き、第2回は岡山で開催します。
日時:2015年9月28日(月)13時30分〜17時10分(13時開場)
場所:山陽新聞社本社 9階 大会議室
〒700-8634 岡山県岡山市北区柳町2-1-1
プログラム・お申込みは↓こちら↓から
https://www.jnsa.org/seminar/2015/0928/
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JNSAメールマガジン 第68号
発信日:2015年8月28日
発行: JNSA事務局
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