★☆★JNSAメールマガジン 第6号 2013.3.15.☆★☆

こんにちは
JNSAメールマガジン 第6号 をお届けします。

韓国ではサイバー攻撃による混乱がなかなか収束しないようですね。 中東を見て も、武力に代る攻撃手段としての脅威はますます高まっています。 国と企業と国民の総力戦という認識が必要だと感じます。
日本ではちょっとうれしい、ちょっと戸惑う桜のDDoS攻撃がピークのようで、 東京では今日、満開が宣言されましたね。
そして、遠隔操作マルウェア容疑者起訴へ、のニュース。 今回のコラムはJNSA顧問・北澤弁護士によるその話題です。

【連載リレーコラム】
「サイバー犯罪と刑事裁判」
(JNSA顧問/法律事務所フロンティア・ロー 弁護士 北沢義博)

(1)はじめに

最近、「サイバー時代の戦争」(谷口長世著・岩波新書1393)という 本を読んだ。近年の軍事技術の変化は、IT技術を基礎とした戦争のネッ トワークシステム化にあるとするもので、これからの戦争は、ロボットやサ イバーシステムが主役になるかもしれないという内容である。映画の「ターミ ネーター」を連想させる。こうなると、私などにはピンとこない。


(2)遠隔操作事件の発覚

というわけで、私にとって多少関連のある、「遠隔操作事件と刑事裁判」を取り 上げることにした。2月10日、遠隔操作ウイルス事件でインターネット掲示版 に無差別殺人を予告したとして30歳の男性が逮捕された。この男性はさらに、日 本航空に対し、飛行機の爆破予告をしたことがハイジャック防止法違反に当たると して再逮捕された。男性は、無実を主張し、弁護人には、足利事件で再審無罪を勝ち取 ったことなどで著名な佐藤博史弁護士がついた。


(3)刑事裁判の構造とフォレンジック

さて、今回の男性を真犯人として処罰するためには、(1)遠隔操作に利用したコン ピュータを特定し(2)そのコンピュータを操作した者が、当該男性であることを証明 しなくてはならない。男性が無実を主張しているとすれば、これを証明するこ とは結構大変なことであろう。

まず(1)の方であるが、いわゆるデジタルフォレンジックの世界になるのであろうか。 警察は、サイバー犯罪対策に力を入れているようで、かなりの解析能力があるようであ る。後述の資料(IT批評3号)によれば、警察には2012年4月の時点で、サイバー 犯罪に対応できる捜査官は22都道府県79人いるとされている。

しかし、刑事裁判においては、警察は、その主体たりえない。刑事裁判とは、警察から引 き継いだ証拠により検察官が起訴し、被告には弁護人がつき、双方から提出された証拠に より、裁判官が判断するのである。従って、検察官、裁判官、弁護人がフォレンジックにつ いて正しい理解がないと適正な裁判が行われないおそれがある。裁判も専門分野における特殊 な知識が要求されるものが増え、民事裁判では、専門部が設置されている。例えば知的財産権 専門の裁判部があり、コンピュータプログラムに関する事案などについては、ある程度対応でき るようになっている。


(4)フォレンジック専門家の必要性

しかし、刑事裁判所は、まだそのような態勢がとられておらず、フォレンジックについて全く知 識のない裁判官が、このような事案を判断するということもありうる。そもそも遠隔操作に使用 されたコンピュータを特定するにはどのような証拠が用いられるのであろうか。私を含めて平均 的な法律家には想像できない世界である。

前述の足利事件では、DNA鑑定が決定的な証拠として、無罪が証明されたが、フォレンジ ックにおいてもこのような鑑定が必要になってくるのであろう。裁判の鑑定に使用されるには、 高度の技術と公正・中立性が求められる。今、このような鑑定ができる機関はどこなのか。

(2)はどうやって証明するのか。(1)で特定されたコンピュータの所有者が操作したということは 一応推定されるとしても、全くの別人が操作した可能性は否定できない。この立証は通常の刑事 事件と同様であるが、被告人が争えば、検察官の立証は結構難しいものになろう。

この事件は、そろそろ起訴の時期に来ているはずだが、検察はどうするか、見ものである。(追 記)・・・と昨日書いたところだったが、本日の報道によれば、検察は男性の起訴の方針を固 めたようである。


(5)IT批評3号

ちょうど、これを書いている頃、「IT批評」(眞人堂)という雑誌の3号が発売され、橘川幸 夫という方が「ネット犯罪捜査の現在」という論説を掲載しているのが目にとまった。やはり、 IT社会に対応できる司法体制の構築を訴えるものである。JNSAとも大いに関係するのではな いだろうか。

この雑誌のメインテーマは「O2O−乱反射するインターネットと消費社会」であるが、随分難 しい議論をしている雑誌であった。興味のある方はご覧ください。


#連載リレーコラム ここまで

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JNSAメールマガジン 第6号 
  発信日:2013年3月22日
発行: JNSA事務局 jnsa-mail
編集: 勝見 勉
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