今回は上田市マルチメディア情報センターさんのインターネット安全教室の取り組みについてご紹介します。上田市では2005年度からインターネット安全教室を開催、その後小規模ながらも多数の安全教室を開催し、情報セキュリティの啓発活動をおこなっていらっしゃいます。上田市マルチメディア情報センターの斎藤史郎氏に今までの取り組みについて、また今後のインターネット安全教室開催についてお話を伺いました。
オープンして12年になる上田市マルチメディア情報センターでは、以前から市民向けのパソコンセミナーやパソコン相談室などを開いていました。パソコンやインターネットが一般市民にも広く使われる時代となり、ネットの利用法やトラブルに関する相談がふえてきた頃、JNSAのインターネット安全教室を知り、2005年8月に第1回目のインターネット安全教室を開催することになりました。当日は、150名余りの方々に参加いただくことができました。
その後も継続して安全教室を開催しましたが、人口12万人(現在は合併で16万人)の上田市では集客が難しいのか、あまり参加者が集まりませんでした。その反省を踏まえて、平成18年度からは市の教育委員会で行っている「出前ときめきの街講座」のプログラムとしてインターネット安全教室を登録し、市内の自治会・育成会などにPRを行いました。自治会や育成会では地区の住民向けに学習会などを毎年行っているため、そこに組み込んでもらうことで、より多くの方に参加していただけるようになりました。自治会などから依頼があると、当センターの職員がパソコンやプロジェクターなど機材一式を持って、公民館などに出前で講座に行きます。教育委員会の出前講座事業ですので、講師料などは全て無料です。
また、全国各地の学校で情報漏洩事件などが相次いでおり、学校現場でのセキュリティ対策の必要性が高まっているため、市内小中学校の先生向けのセキュリティ研修(夏休み・冬休みに開催)の一部として安全教室を受講してもらいました。その結果、平成18年度は全18回の教室で、合計800名余りの参加者がありました。
このように市の事業の一環として安全教室を行っているため、公共施設を利用しながら費用をかけずに運営することができていますが、民間のNPOなどではなかなか難しいと思います。全国連絡会議で他の共催団体が会場の確保などに苦労している話を聞き、上田は恵まれた環境だと感じています。
自治会・育成会などへの出前講座は、引き続き行っていく予定です。こちらから出かけていくことで、市民がネットの危険性やその対策について学ぶ機会を増やしていきたいと思っています。また、これまで教室を開催してきた経験から考えると、参加者層が、中高年、そして子供を持つ親・保護者に二極分化しているように思います。そのため、今後の安全教室では、参加者のターゲットを絞った内容にすることも検討する必要があると思います。
たとえば中高年層ですが、「2007年問題」と言われているように、時間に余裕ができた中高年の方が増えています。「じゃあパソコンを初めてみるか」とパソコンやインターネットを始めるのですが、何もわからないままウイルス感染などの被害に遭ってしまいます。こうした中高年の方は本当に初心者ですので、安全教室で「WindowsUpdateを必ずやってください」と言っても、何のことだかさっぱりわからない方もいらっしゃいます。そんな時は、教室終了後のアンケートで「話が難しい」「もっと簡単に話して欲しい」という感想が出てきます。こうした中高年向けに初心者レベルの教室が必要ではないか、と思っています。
一方、子供を持つ保護者は、子供がパソコンや携帯電話でいろいろなサイトを見たり、メールをやり取りしたりしていることに、大きな不安を感じています。「自分のことはともかく、子供が勝手に使っているのを何とかしたい」、こうした保護者に対しては、子供の利用、特に携帯電話のネット利用に重点を置いた教室が必要ではないか、と思っています。子供はそれとは知らず著作権を侵害してしまったり、出会い系サイトや架空請求の被害にも遭ってしまうことがあります。こうしたネットの危険性や対策について、誰かが子供達に教えないといけません。しかし、特に小中学校では「携帯持ち込み禁止」と決めている所が多いので、学校では無闇に携帯の話ができない、という現状もあるようです。既に今年度の出前講座の予約で「子供向けの話をして欲しい」という希望がいくつか来ています。過去に小学校へ出向いた講座では、安全教室の教材を使いつつ、子供向けに内容をアレンジして話しました。今後は学校や育成会などをチャンネルとして、直接子供達にネットモラルやネット上でのコミュニケーションについても話す機会を増やしていきたいと考えています。
上田市マルチメディア情報センター(愛称:メディアランドUEDA)は、全国6カ所のマルチメディア情報センターの1つとして、平成7年にオープンしました。開設には経済産業省の支援をいただいていますが、上田市の公共施設として運営されています。事業内容としては、一般市民向けのパソコンセミナーやイベント、地域の文化資産をデジタル化して活用するデジタルアーカイブ事業、産業支援向けのデジタルファクトリー利用などがあります。最近では、行政や学校・生涯学習施設などのネットワーク活用支援、情報教育支援などに力を入れています。