今回は、北海道・室蘭で地域情報化推進を柱として活動されているNPO法人くるくるネットさんの取り組みを紹介します。「人口や地理的な問題もあって、普段は札幌まで行かないとなかなか一般ユーザーを対象としたセキュリティ講習を受ける機会がありません。そこで、こうした問題をなんとかしたいと共催者募集に応募しました」と語るくるくるネットの理事長 鳥山晃氏に、安全教室開催の意義と成果、今後の活動方針などについてお話を伺いました。
くるくるネットがNPO法人としてスタートしたのは2004年5月のことですが、私自身、パソコンのサポート活動を通じてユーザーの方々の知識レベルに大きなギャップがあることを以前から痛感していました。また、初心者の方がインターネットに触れる機会が急速に増してきたことで、さまざまな脅威に晒される可能性も高まっており、こうした状況を何とかしたいとも考えていました。そんな中、NPO法人としてスタートした2004年秋に、偶然ホームページでインターネット安全教室の共催者募集に関する記事を見つけたことが開催のきっかけとなりました。JNSAさんに問い合わせをすると、北海道での開催に協力していただける団体を探しておられるという話を聞きました。それではということで、お互いのニーズが合い、早速その年の12月に開催をすることになりました。
北海道では人口的にも地理的にもどうしても札幌が中心となりますから、普段室蘭でこういう講習を受講する機会はほとんどありません。しかし、地元には室蘭工業大学、近くには日本工学院北海道専門学校があり、また、インターネットのインフラの整備も進み、市も積極的に地域情報化を推進しようとしていているところで、ちょうどセキュリティの重要性について訴えるにはタイミングが良かったですね。開催決定から実施まであまり時間がなかったのですが、日本工学院さんに学生さんの参加の呼びかけをお願いしたり、地域の新聞にも告知を4回ほど載せてもらい、テレビでも告知をしていただいたこともあって、初回にも関わらず130名という多くの方の参加を得ることができました。また、参加された方々にも概ね、好評でした。
ただ、何しろ初回ということで手探りの状態でしたから、どのレベルの方々をターゲットにすれば良いのか的確に把握できていたわけではありません。実際、授業などで日頃からPCに触れている学生さんと一般のシニアの方とでは知識レベルの差は少なくないですから、すべての参加者の方に満足してもらったかといえば、それは難しかったと思います。そこで、その後の継続学習が大事だという思いからJNSAさんの講師トレーニングを受講し、2005年11月に内容を一新した第2回インターネット安全教室を開催しました。私もトレーニングを受けたことで、セキュリティの重要性について再認識することができましたし、2回目の安全教室の講習には最近の傾向をふんだんに盛り込むことができました。例えば、最近のウイルスは知らない間にPC内の情報を漏えいさせたり、パスワードを盗むことを目的としているため自覚症状が無く、時には自分が意図せずに加害者になってしまう可能性があることや、ウイルス対策は一度行えば終りではなく、常にウイルス定義ファイルを最新の状態にしておかなければ意味がないことなどを説明しました。また、北海道警察本部による講演では「インターネット犯罪に遭わないために」と題し、インターネット詐欺の標的は若者層から50代、60代に移行しており、ワンクリック詐欺にあまりにも簡単に被害にあってしまうケースが多い−−−などの現状を紹介し、とても高い関心を持っていただけたようです。
さらに、2006年11月に第3回目のインターネット安全教室を開催した際には、あえてもう一段レベルを下げて、携帯電話安全教室と題して、携帯電話によるメールやインターネットの安全な利用法について、事例を交えて分りやすく講演してもらったところ、大変好評でした。
今後の活動についてですが、教育関係者に声をかけて、親子インターネット安全教室などの開催にも積極的に取り組んで行きたいですね。また、もう一つは、インターネット安全教室では物足りないと感じるミドルユーザーをはじめ、企業、団体のセキュリティ担当者の方に向けてのセキュリティ講習の実施を検討しています。さらに、これまでさまざまな業界関係者、団体、学校などが個々に行ってきた活動を連携させて、セキュリティ推進協議会を立ち上げ、セキュリティ先端都市の実現に貢献していきたいと思います。
JNSAさんへの要望ですが、難しいとは思いますが、インターネット安全教室のマニュアルについて、全国共通のものと共に、地域差やレベル差といったものをある程度考慮したものがあると助かります。
くるくるネットの設立は2004年5月で現在の会員数は11名です。主な活動としては、初心者向けパソコン教室の開催、IT啓発活動、地域情報発信、各種街づくり活動支援などの事業に取り組んでいます。中でも、初心者向けパソコン教室の受講生はのべ1000名になります。IT啓発活動の中心はインターネット安全教室ですね。また、地域情報発信として、ホームページ「くるくるネット」を作成し、更新しています。現在は、家庭、住民に対して、イベント情報、観光情報、飲食情報、お買い物情報、防災情報など、内容の充実を図っている最中で、ホームページに参加する人々のコミュニケーションが進む仕組みづくり(ソーシャルネットワーキング)を研究・実践したいと考えています。