★☆★JNSAメールマガジン 第55号 2015.2.27.☆★☆
【連載リレーコラム】
「サイバー旅行記(イスラエル編)」
(株式会社ラック 常務執行役員 セキュリティプロフェッショナル本部 本部長 丸山司郎)
標題は、ガリヴァー旅行記のモジリである。その心は、これを機に様々なプロフェッショナルの方々によるサイバー旅行記をメルマガとして寄稿いただき、シリーズ物として継続されることを期待してのものである。
誠に僭越ながら第1話としてイスラエル編を書かせていただく。
実は、昨年7月にも茂木経済産業大臣がイスラエルをご訪問された際にも参加させていただいたことから、今回で2回目の訪問となる。
この2回の訪問において、いずれも歴史に残るインシデントを身近に経験した。
昨年7月の訪問では、イスラエルの3少年殺害に端を発するガザ侵攻が始まったタイミングであり、ミサイル警報でシェルターに緊急避難するという体験をした。
今年2月の訪問ではISISによる2名の日本人誘拐事件が発生し、いずれも日本の方々には大変ご心配をおかけすることになった。
ただ、これらの経験をしたからといって、イスラエルという国に対するマイナスイメージを持つことはなく、却ってこれからのサイバーセキュリティを考えるうえで、外せない国であるという確信をもつことができた。
イスラエルへは、トルコのイスタンブールでの乗り継ぎを含め、羽田から17時間ほどかかる。空港はビジネスの中心地であるテルアビブにあり、国の大きさが四国ほどであることから、観光地として有名な聖地「エルサレム」や、水に浮かんで新聞が読める「死海」には1日あれば往復できるサイズである。
国情としてはご存知のとおり緊迫した臨戦状態が続いており、外務省の海外安全ホームページでは、全体的に「十分注意」、境界地域については、「渡航延期勧告」が出ている。しかし、今回訪問した地域(テルアビブ、エルサレム)に限って言えば、夜にジョギングをしている人もいるし24時間のコンビニも開いており、治安が荒れているという雰囲気は感じられなかった。紀元前からの歴史を持つエルサレムは観光で成り立っている町であり、治安の確保には力を入れているものと思われる。
食事はおいしく、肉、魚、野菜など新鮮なものが食べられるが、独自の伝統料理がある訳ではなく、イスラエルに移住してきた人々が持ち込んだ様々な料理が提供されている。海外旅行先としてお勧めかというと、世界中のイスラム教徒が訪れる宗教の聖地であり世情が落ち着けば一度は行ってみるべき所だと思う。
イスラエルは中東のシリコンバレーといわれるベンチャービジネス発祥の地だがその理由は、国の成り立ちにある。
ユダヤ民族は5,000年の歴史を持つ。しかし国家としては1948年に建国されたばかりのまだ若い国であり、ユダヤ民族が故郷パレスチナに帰り国を再建するという目的のために、世界中からユダヤ人が集まって出来上がった国である。ちなみにネタニヤフ首相は現在でも海外のユダヤ人に移住を呼びかけている。
つまり、イスラエルは国家としての歴史が浅く資源国でもないことから、唯一の財産である人材を活用した知恵による産業の育成、つまりベンチャービジネスの育成が最重要の国策となっている。
イスラエルの知恵を活用した産業の歴史は、移民が持ち込んだダイヤモンドの加工技術にはじまり、ハイテク技術を使い海水から真水を作り、砂漠に点滴灌漑をおこなうことで農産物の輸出を行い農業立国を実現している。農地面積当たりの生産性は日本の数十倍といわれ、食料自給率は100%であり、輸出額は日本を抜いている。
現在は、ハイテク・ソフトウエアに注力しており、イスラエルへの外資企業の投資額は、2014年が3,400億円、2015年は1月末でAmazon, Dropboxなどによる買収等で、すでに1,000億円を超えるといわれている。
イスラエルでは、18歳から21歳まで男女共に徴兵制をひいている。徴兵期間中は、個人の能力に応じた研修、訓練が行われ人材育成の仕組みとしても活用されている。
その中でも人気なのが戦闘に関与しなくてもよく、徴兵期間終了後に直接スタートアップが可能なハイテクやソフトウエア領域であり1,000人規模で配属されているとのことである。
実際、徴兵期間において、ソフトウエア技術を専門とした人と、経理、人事、法務などの実務に必要な能力を持った同期生がチームを作って企業するケースが多数みられるとのことである。
その中でもサイバーセキュリティ分野は特に人気があるそうである。周辺国との臨戦状態が続くなか、物理的な攻防だけではなく、当然サイバー上の攻防が繰り広げられていることは明らかであり、そのための軍事技術の研究開発が積極的に図られ、それらが技術的基礎としてビジネスの種となっている。
結果として、2015年現在、イスラエルで活動しているサイバーセキュリティの企業数は約380社程度存在し、ソフトウエア領域への投資額の内30%を占めているといわれている。
イスラエルが最近、日本に対して大きな期待を抱いている。
その狙いの一つは日本の市場であり2020年までに日本への年間輸出額の50%増加を狙っている。
もう一つはお互いの国の持つ異なる強みの融合である。イスラエルの強みはイノベーションによるベンチャービジネス、一方日本の強みは、事業の長期継続と拡大。
これらをうまく組み合わせることでwin-winの関係が築けると期待されている。
2020年のオリンピック・パラリンピックを控え、サイバーテロを意識していかざるを得ない状況の中で、イスラエルとの関係はますます深まるものと思われる。
明るい両国の未来を期待したい。
【部会・WG便り】
★JNSA標準化部会/電子署名WGでは、先端IT活用推進コンソーシアム様との共催で3月14日(土)にハンズオンセミナーを開催します。
「電子署名(PKI)ハンズオン ?電子署名・タイムスタンプ超入門!?」
https://www.jnsa.org/seminar/pki-handson/150314/index.html 日時:2015年3月14日(土)13:30-18:30
※終了後、懇親会も予定しています。
場所:インタセクト・コミュニケーションズ株式会社 セミナールーム
(千代田区神田錦町3丁目14-12 神田錦町ミハマビル8階)
参加資格:電子署名技術の利用や応用に興味がある方はどなたでも、JNSA会員以外の方もご参加いただけます(参加費無料)。
お申込みはJNSA事務局までご連絡ください。
★JNSA会員交流部会/経営課題検討WGでは、3月18日(水)に独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の関根様を講師に招き、NEDOの事業紹介とセキュリティ要件に関する勉強会を開催します。
◆日時:2015年3月18日(水)18時?19時30分
※終了後、希望者により懇親会予定
◆場所:JNSA事務局 1階 会議室
お申込みはJNSA事務局までお願いします。
★JNSA標準化部会/PKI相互運用技術WG・電子署名WG主催セミナー「PKI Day 2015」を4月10日(金)に開催します。
「PKI Day 2015」?サイバーセキュリティの要となるPKIを見直す?
日時: 2015年4月10日(金)9時30分-17時40分
場所: ヒューリックカンファレンス秋葉原 ROOM 1
プログラム・お申込みは↓こちらから↓
https://www.jnsa.org/seminar/pki-day/2015/
★2/20に開催しましたJNSA西日本支部主催セミナー「NSF 2015 in Kansai」は盛況のうちに終了いたしました。
多くの方々のご参加ありがとうございました。
【事務局からの連絡、お知らせ】
★新年度に向けて、新しい活動テーマをお持ちの方がいらっしゃいましたら、事務局までご連絡下さい。新規WGのご提案も大歓迎です。
★登録情報にご変更がある方がいらっしゃいましたら、事務局までご一報をお願いいたします。
☆コラムに関するご意見、お問い合わせ等はJNSA事務局までお願いします。
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JNSAメールマガジン 第55号
発信日:2015年2月27日
発行: JNSA事務局
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