JNSAメールマガジン 第60号 2015.5.8.☆★☆

こんにちは
JNSAメールマガジン 第60号 をお届けします。

今年のGWは初夏のお天気となり、みなさん海に山に海外に、あるいはご自宅で大掃除など有意義に過ごされたことと思います。
JNSAのホームページでは、2015年度の活動内容に更新しました。
新規に発足するWGもありますので、ぜひ会員のみなさまはWG活動に御参加いただければと思います。

2015部会・WG活動
https://www.jnsa.org/active/2015/act.html

さて、リレーコラムはJNSA電子署名WGメンバーによる全4回の連載の最終回です。
今回は、電子署名WGサブリーダー/有限会社ラング・エッジ 宮地直人様からの寄稿です。

【連載リレーコラム:テーマ「電子署名」】
「電子署名応用の現在と未来」
(電子署名WGサブリーダー/有限会社ラング・エッジ 宮地 直人)

3回連続のリレー形式で電子署名の話題が続きましたが、今回は最終回と言うことで電子署名利用に関する現状をまとめた上で今後の姿をまとめてみます。

◆電子署名利用に関する現状

JNSA電子署名WGは、標準化部会として主に標準化活動をおこなっていますので、市場調査はWGの目的ではありません。この為に電子署名の市場について統計的な数値を持っている訳ではありませんが、メンバー各社においてこの数年で市場が広がってきたと言う声が多く聞かれるようになりました。

欧州においても前回と前々回に述べて頂いたように、eIDASやEU版トラスト・リストのような法と標準の整備がなされてきています。これはEU内において電子化文書の利用を推進してビジネスを活発化させる目的があり、各国政府内でも電子署名関連技術の採用が多くなされています。

米国では法律が異なる為に、日欧が採用しているデジタル署名の仕組みとは異なり電子証拠(デジタルエビデンス)が重要となります。電子証拠をベースとした非PKIクラウド署名サービスの利用が拡大しています。クラウド署名や電子証拠に関してはPKI Day 2014にて発表しました。以下から資料が取得できます。
https://www.jnsa.org/seminar/pki-day/2014/

日本においても、サービスのクラウド化やモバイル対応を契機に、電子文書化が推進されるようになってきました。それと同時に、その基盤技術である「電子署名」が再注目されるようになり、サービスへの導入へと繋がっているように感じられます。電子署名を利用する法律の規制緩和に向けた改訂やガイドライン公開の動きもあります。例えば建築確認手続きの電子申請に関するガイドラインも昨年5月に公開されています。

今後はビジネスのグローバル化を考える上で、米国や欧州との電子署名の相互運用も重要になってくると予想されます。その時にはやはり標準化が必要になり、電子署名WGでの標準化活動がますます重要になります。

◆電子文書フォーマットにおける長期署名の採用の動向

電子署名普及の別の面での一因としては、PDFファイルにおける長期署名PAdESの標準化と、デファクト・スタンダードになっているAdobe Reader/AcrobatにおけるPAdESの採用があると考えられます。これまで長期署名は一般の利用者が簡単に利用できるものではありませんでした。それが多くのPCにインストールされているAdobe Readerで簡単に利用できるようになったのです。

一方でWord/Excel等のOffice系文書は、XMLとZIP圧縮を使った文書フォーマットであるOffice Open XM(OOXML)やOpenDocument(ODF)と言った形式があります。PAdESの成功を見た為でしょうか、近年ではOOXML/ODFにおいても長期署名の仕様検討が進んできています。ODF 1.2では既に長期署名XAdESの利用が可能になっています。OOXMLも次の仕様改訂で長期署名XAdESの採用に向けて現在検討中です。

マイクロソフトとアドビ、ドキュメント世界のビッグネームが揃って長期署名対応をコミットしたことの意味は大きいでしょう。更には電子書籍で利用されるEPUBでも長期署名提案の動きがあります。電子署名WGでもこれら文書フォーマットの標準化に関してISOのメンバーや国内リエゾンとして活動をしています。

このように電子文書の基本フォーマットにおいて電子署名特に長期署名の採用が近年急ピッチで進んできています。近い将来にはどの電子文書フォーマットを選択しても長期署名が可能になることでしょう。長期署名がもっと身近になりそうですね。

◆電子署名からトラスト・セキュリティへ

電子署名はコンテンツを守れないからセキュリティでは無い。というような話をたまに聞きます。一つの答は「電子署名は電子文書の信頼性(トラスト)を守るセキュリティである」と考え、そこからから「トラスト・セキュリティ」と言う新しい言葉と概念を考えてみました。

電子文書やデータの信頼性は電子署名で、時刻の信頼性はタイムスタンプで、信頼点の信頼性はトラスト・リストで、クラウドの信頼性は電子認証で…信頼性を守ることができます。これらは全てトラスト・セキュリティの一種と言えます。

また今までは電子署名と言えば自然人が前提でしたが、今後は法人が電子署名を付与する欧州のe-sealであったり、IoTのデバイスやクラウドサービスも電子署名を利用する時代が来ると予想されます。特にIoTやロボット等の技術において外部との交換メッセージや相互認証に対しての信頼性が必要となります。

電子文書の以外でも、信頼性が必要な分野であれば電子署名やPKI等のトラスト・セキュリティの技術を応用して信頼性を確保することができそうです。まだ検討を始めたばかりですが、試行錯誤しつつ検討して行きたいと考えています。

◆最後に

これからは標準化だけでは無く普及活動にも力を入れていきます。3月には半日かけて実際に署名やタイムスタンプを体験して頂く「電子署名ハンズオン」も実施しましたが(満席で九州や北海道からの参加者もいらっしゃいました!)、利用者の方からの電子署名に関するニーズや期待を強く感じました。同時に電子署名はまだまだ分かり難いとの声もありましたが…だからこそ技術標準を分かり易く発信して行く必要性を感じました。電子署名ハンズオンの情報は以下にて公開中です。
  http://eswg.jnsa.org/sandbox/handson/

今回は短くまとめる為にかなり話を端折ってしまいました。しかしこれから電子署名の技術の利用が拡大すると言う手応えを感じて頂けたでしょうか。これからの電子署名の明るい未来を信じたところで、リレーコラム電子署名のシリーズを「電子署名サイコ― ※」の一言で終わりにしたいと思います。
※ 第1回の「電子署名再考」にかけたダジャレです(笑


#連載リレーコラム、ここまで

<お断り>本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。


【部会・WG便り】

★「JNSA 2014年度活動報告会」を開催します。
  日時:2015年6月9日(火)9:30〜15:30
  場所:秋葉原UDXギャラリーネクスト

 JNSAの部会・WGの活動報告と今後の活動計画などの発表を行います。
 プログラムは来週中に公開予定ですので今しばらくお待ちください。

★海外市場開拓WGではWGメンバー募集中です。第1回WGは5月19日(火)に開催しますので、ご興味ある方は事務局までお問合せ下さい。

★セキュリティ理解度チェックWGでは新規問題作成にあたりWGメンバーを募集中です。ご興味ある方は事務局までお問合せ下さい。

★JNSA教育部会では「情報セキュリティ講師紹介」ページを公開しました。
 ぜひご活用下さい。
 https://www.jnsa.org/edu/koushi/index.html
 
 JNSAの部会・WGは会員企業の方でしたらどなたでも参加できます。
 部会・WGへの参加申し込みは事務局までご連絡ください。

【事務局からの連絡、お知らせ】

★2015年度JNSA定時総会のお知らせ
 6月9日(火)に秋葉原UDXギャラリーネクストにてJNSA総会を開催します。同会場でJNSA活動報告会も開催予定です。
 詳細は後日ご案内いたします。

★2015年度JNSA定時総会のお知らせ
 6月9日(火)に秋葉原UDXギャラリーネクストにてJNSA総会を開催します。同会場でJNSA活動報告会も開催予定です。
 詳細は後日ご案内いたします。


★JNSAインターンシップに参加していただける企業様を募集しています。インターンシップの実施に興味がある会員企業様は事務局までお問合せ下さい。
 JNSAインターンシップ  https://www.jnsa.org/internship/

★登録情報にご変更がある方がいらっしゃいましたら、事務局までご一報をお願いいたします。


☆コラムに関するご意見、お問い合わせ等はJNSA事務局までお願いします。

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JNSAメールマガジン 第60号 
発信日:2015年5月8日
発行: JNSA事務局 jnsa-mail
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